「自己株式の消却ってなに?」
「イオンフィナンシャルサービスが自己株式の消却を発表したけど株価に与える影響はどうなの?」
そんな方に向けて僕の考察結果を共有します。
どうも。SK2 a.k.a. マンビー(@SK2akaManbe)こと、イオンフィナンシャルサービスに投資するマンです。
2019/8/27の大引け後に、僕のポートフォリオを構成する銘柄であるイオンフィナンシャルサービスが「自己株式の消却」を発表しました。
発表を受け、PTS市場では株価は28円上昇し、1,530円を付けましたが、8/28以降の株価はどのようになっていくのでしょうか?
マンビー投資法をはじめて、初の株式イベントということもあって、自己株式の消却が株価に与える影響についてまじめに考えてみようと思います。
ちなみに、イオンフィナンシャルサービスは2012年以降売上高、経常利益ともに8年連続で成長しているとても優良な企業なのですが、2019年5月以降なぜか株価は右肩下がり。
現在、株価は年初来高値2,358円(3/19)を大きく下回る1,502円(8/27)で取引されています。
イオンフィナンシャルサービスの発表内容
イオンフィナンシャルサービスが発表した自己株式の消却の内容は以下です。
- 消却する株式の種類:普通株式
- 消却する株式の総数:950万株(発行済株式総数の4.21%)
- 消却予定日:2019/9/20
- 消却後の発行済株式総数:216,010,128株
自己株式の消却という発表で、自己株式の取得という記載はありませんでした。今回は自社株買いはせずに、自社で保有している株を消却するものだと思われます。
ちなみに、似たような言葉で「自己株式の処分」というのがあるのですが、”消却”と”処分”では全く意味が異なるので、ご注意ください。
自己株式の消却が株価に与える影響
では、自己株式の消却が株価に与える影響を考えてみます。
株式の消却 = 発行済株式総数が減ることから以下のことが考えられます。
- 希薄化による株式の価値上昇
- 1株益(EPS)の上昇/PERの低下
- 配当金総額の減少
- 自己資本比率の低下
それぞれ詳しくみていきます。
1. 希薄化による株式の価値上昇
これは簡単な話で、例えば元々100個あったものが、50個になったら当然その価値は2倍になってもおかしくないですよね。
これと同じ話が株式の消却にも当てはまるというわけです。今回は発行済株式総数の4.21%を消却するので、通常であればそのくらいの価格の上昇は見込める可能性があります。
ただし、今回は自社株買いを行わないこと、自己株式を消却することという2点から、元々市場には出回っていない自社保有の株式(金庫株)を消却するため、「希薄化による株式の価値上昇」は考えにくいです。
2. 1株益(EPS)の上昇/PERの低下
1株益(EPS)は以下の式で求めることができます。
- 1株益 = 純利益 ÷ 発行済株式総数
発行済株式総数が減るということは、純利益を固定とすると1株益が上昇しますよね。また、PERは以下の式で求めることができます。
- PER = 株価 ÷ 1株益
1株益が上昇するということは、PERが下がりますよね。
PERが下がるということは、株価の割安感が強くなります。つまり、株式消却が株の割安感を高め、投資家の買いにつながる可能性があるということが考えられます。
実際にどのくらい1株益やPERが違ってくるのかというと、株価を1,500円、純利益を2020年2月期予想の380億円とすると、
消却前は、
- 1株益(消却前) = 380億円 ÷ 225,510,128株 = 168.5円
- PER(消却前) = 1,500円 ÷ 168.5 = 8.9
消却後には、
- 1株益(消却後) = 380億円 ÷ 216,010,128株 = 175.9円
- PER(消却後) = 1,500円 ÷ 175.9 = 8.52
となるわけですね(実際の値とは若干異なっていると思いますが、このくらいのインパクトがあると考えてもらえればいいと思います)。
PERにするとわかりにくいですが、1株益で考えると7.4円とその差はなかなか大きいことがわかると思います。
株価は
- 株価 = PER × 1株益
で求めることができるので、株価にしてPER=10なら74円、PER=15なら111円違ってくることになりますからね。
3. 配当金総額の減少(配当負担の軽減)
配当金総額は以下の式で求めることができます。
- 配当金総額 = 配当金 × 発行済株式総数
発行済株式総数が減るということは、配当金を固定とすると配当金総額が減ることになります。
実際にどのくらい減るのかというと、2020年度の配当金は68円(中間:29円、決算:39円)を予定しているので、
- 配当金総額の減少額 = 68 × 950万株 = 6.46億円
1Q決算時点での利益剰余金が約2,342億円なので、割合からすると大した額ではないですね。
元々配当金として予定していた6.46億円は何に使われるのでしょうか?
もしそのまま配当金として使ってくれるなら、発行済株式総数が約2.16億株なので3円くらいの増配が期待できるかもしれないですが、まあこれは超ポジティブシンキングですかね…(笑)
ただ、少なくとも配当金総額の減少は、株価下落には繋がらない、むしろ増配期待による株価上昇に寄与する形になると考えられます。
4. 自己資本比率の低下(ROEの改善)
自己資本比率というのは以下の式で求めることができます。
- 自己資本比率 = 自己資本 ÷ (自己資本 + 他人資本) × 100
元々自社で保有していた株式を消却するということは、自己資本が減少することにつながります。ここで他人資本を固定とすると、自己資本が減少すれば、自己資本比率が低下することになります(複雑になるので計算式は省略します)。
実際にどのくらいの自己資本が減少するのかというと、1株を1,500円とすると、
- 自己資本の減少額 = 1,500円 × 950万株 = 142.5億円
約142.5億円の自己資本が消えるということになります。とんでもない金額ですが、1Q決算時点でイオンフィナンシャルサービスの総資産は約5.5兆円、純資産は約4,446億円なので、142億円が消えても自己資本比率にはほとんど影響ありません(もちろんROEにも影響なし)。
つまり、自己資本比率の低下を嫌って株が売られる(ROEの改善で株が買われる)ということはなさそうです。
自己株式の消却が株価に与える影響(予想)
上記の①~④を考察して、自己株式の消却は短期~中期にかけて株価には良い影響を与えるものだと思いました。
少なくとも株価が減少する要因はどこにも見当たりません。
そりゃあそうですよね。イオンフィナンシャルサービスも自己資本を142.5億円も減らして、ただでさえだだ下がりな株価をさらに押し下げるようなことはしないですよね。
これが”消却”ではなく、”処分”だったらまた全然違う話なんですが、今回は自己株式の消却ということで、株価は短期~中期にかけて上がっていくのではないかなと予想します。
つまり、「自己株式の消却」はポジティブサプライズだったと僕は思います。
自己株式消却発表後の値動き
8/27の大引け後に自己株式の消却を発表して、PTS市場ではその日の終値1,502円から1,530円を付けました。
PTSではポジティブな反応でしたが、8/28以降の株価はどのようになったのでしょうか。
こちらが翌日(8/28)の株価チャート。

8/27の終値よりも下げて1,496円で始まりましたが、その後巻き返しています。しかし、後半ダレて1,503円で引けました。終値にしてわずかに1円の上昇。
短期的にもかなり上げると思ってたのですが、まさかの前日終値よりも安値でスタート。僕の考察は見事に裏切られてしまいました(笑)
絶対に株価は上がると思ってたんで、実は前日に1521円で指値注文出してたんですけど、1496円で買えました(爆)
業績が想定通りなら、短期~中期的に絶対に上がると思っているので、今後の株価にも注目していきたいと思います(数ヶ月後にチャートとともにこの記事に追記します)。
自己株式消却が株価に与える影響まとめ
それでは、今回の記事をまとめます。
- 自己株式の消却は株価に良い影響を与えると予想する
- 少なくとも株価を押し下げる要因は見当たらない
- 今後の株価にも注目していく
イオンフィナンシャルサービスには今後も注目していきますが、業績や世界情勢によっても株価が左右されるので、純粋に「自己株式消却が株価に与える影響」をはかるのは難しいかもしれませんね。
業績が予想通りなら、日経平均よりも良いパフォーマンスは出せると思うんですが。
牛のお乳みたいにだらんと株価は下がりっぱなしで買う気も失せるんですが、このまま1500円台でくすぶるなら、業績を見てさらに買い増ししていこうと思います。
長期的には、株価も上昇すると思ってますからね!
投資は自己責任でお願いします。
最後までお読みいただきありがとうございました
m(_ _)m
おわりでーす。